ようこそ 辻本税理士事務所へ

 最近読んだ本の中から感銘したものを、自分の備忘録として書き記していきます。個人的なつたない感想の域を出ないのは、ご容赦下さい。

雨やどり(半村良)

 なぜか急に読みたくなって、40年ぶりにページをめくっていきました。読み進めていくうちに、作品の背景と自分の若かりし頃の青春がオーバーラップしてきて、思わず熱いものがこみ上げてきました。改めて半村良の新宿馬鹿物語のすばらしさを満喫しました。(2014.1.31)

夏姫春秋(宮城谷昌充)

 宮城谷昌光といえば中国時代小説、と言われるほど著名な作家ですが、この小説は「天空の船」につづく著者の出世作で、前作の「天空の船」は直木賞候補作で終わりましたが、この作品で見事に直木賞を受賞されました。
“人は苦しんだだけ楽しみ、楽しんだだけ苦しむ。公平なものだ。”“策とは、他人のために用いるのであって、自分のために用いると狂いが生じる”など、随所に宮城谷節がでてくる。上下巻とも一気読みの直木賞にふさわしい作品でした。(2013.11.4)

恋歌(朝井まかて)


時は幕末、水戸藩の若き藩士とその妻を舞台にした恋心たっぷり情感溢れる小説です。主人公は明治の歌人、中島歌子。主人公が恋いこがれた水戸藩士と結婚してから、有名な天狗党の乱による壮絶な拷問に耐えかね、その後歌人として力強く生き抜く人生賛歌です。いじらしくて、切なくて、悲しくて、、、、。余韻の残る作品でした。(2013.10.05)

本日は、お日柄もよく(原田マハ)

 “困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。
三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。
どうだい?そんなに難しいことじゃないだろう?だって人間は、そういうふうにできているんだ。"
スピーチライターという未知の仕事に、失敗しながらも飛び込んでいく若き女性の奮闘もの。美術館のキュレーター出身者らしくない作風が気に入りました。(2013.9.14)

洛中洛外画狂伝(谷津矢車)

 本作がデビュー作品ということですが、狩野永徳の絵に対する執念と情熱を見事に表現しています。将軍足利義輝との交流があまりに淡白なのは仕方ないとして、織田信長との対決が尻切れとんぼだったのは残念。(2013.9.1)

楽園のカンヴァス(原田マハ)

 日曜画家アンリ・ルソーの『夢』を題材にした異色の推理小説です。前衛画家として不遇の時代を送ったルソーと彼を支えたP・ピカソ、後に高名な画商となる貧しい下宿人。そうした人物を一枚の絵『夢をみた』を巡って、日本人女性の美術館監視員とニューヨーク近代美術館の学芸員が繰り広げる推理サスペンス。最終結末もあっと驚く展開に、充足感ある1冊でした。(2013.8.3)

巨鯨の海(伊東潤)

 直木賞候補作3作目となった今回は、今までの戦国武士の闘いではなく、和歌山県太一の鯨取りの男たちの壮絶な死闘を6編の短編集として描いています。著者は常に戦う男の激しい闘志とそれの両極にある深い愛情を、一貫して強いタッチで表現しています。個人的には今回の作品が最高でした。直木賞を取れなかったのが大変残念に思います。ますます楽しみな作家です。(2013.7.31)

新・雨月~戊辰戦争朧月夜~(船戸与一)

日本歴史上、華々しい革命を起こした明治維新の実態は薩長を中心とした新政府軍と、会津藩などの北方政権との鳥羽伏見の戦いに始まる北越での戊辰戦争、五稜郭での函館戦争と、まさに日本の南北戦争であった。この小説では、武士、町民、農民の目から新しい日本を見つめようとしているが、それはあまりにもむごい流血譚であった。ハードな一冊でした。(2013.7.20)

アニバーサリー(窪美澄)

「ふがいない僕は空をみた」「晴天の迷いくじら」に続いての3作目に挑戦しました。従来通り、暗くて、重くて、途中で読むのをやめようかな、と思いつつ最後の最後で希望を持たすような展開で、読み切った後に妙な充足感に浸ってしまいます。なんかクセのある作家ですね、もちろんいい意味で。(2013.7.15)

何者(朝井リョウ)

最年少の直木賞作家で一躍有名になってしまった朝井リョウさん。就活に励む5人の大学生を実に現代風にアレンジしています。僕はfbを使わないので、作品でfbが主人公たちの語り役となっていますが、タイトルの「何者」とは実はこのfbに隠れたもう一人の自分を描こうとしているのではないでしょうか?(2013.7.5)

一路(浅田次郎)

一言でいうなら“上手すぎる”んです。主人公は参勤交代供頭の小野寺一路、その主人公をダシにしてお殿様、双子の槍持ち、ギンギラギンの派手好きな武士、等々を次々に登場して、ドタバタ劇に突入していくわけなんですが、展開があまりに出来過ぎてて途中から“小説が上手すぎるなあ”と醒めた読み方をしてしまいました。(2013.07.02)

島はぼくらと(辻村深月)

 前作の直木賞受賞作(短編集)は個人的に好きになれなかった作品でしたが、今回の長編小説は素晴らしいの一言でした。簡単に言ってしまえば高校生男女4人の青春群像なんですが、本土からIターンの若手を受け入れる冴島の人々と、彼ら彼女らのお祖父さんお祖母さんたちから引き継いでいく島の伝統、そして「兄弟」の契りという友情の絆をテーマに、カラッと明るく前向きに仕上げてあります。。「島はぼくらと」というタイトル通り若者の成長ぶりが情緒豊かに描かれていました。(2013.6.28)

遊び奉行(野口卓)

「軍鶏侍」が大変面白かったので、その流れで「遊び奉行」を読み出しましたが、屈託のない文章、ユーモア溢れる、楽しい作品でした。後半には「軍鶏侍」につながるエピソードを挿入するなど、なかなか洒落っ気のある作家に巡り会えました。次作も楽しみです。(2013.6.16)

採薬使左平次(平谷美樹)

 おもしろかった、楽しかったです。初めて読む作家ですが、文章に無駄な言葉、余計な表現が無く、気持ちよく物語に入り込んでいけました。小説の舞台は八代将軍徳川吉宗の時。薬草使植村左平次、と言っても初めて耳にする人が多いと思いますが、幕府直轄の薬草園の役人であり、その実体はお庭番。奇想天外な手法で幕府転覆を狙う浪人たちとの駆け引き、手に汗握るラストシーンにのめり込んでしまいました。 (2013.6.12)

天皇の刺客(澤田ふじ子)

 ペリー率いる黒船到来を75年後に迎えた京都で時の権力を江戸幕府から天皇を頂点とした朝廷の時代に戻そうと奮闘する公家を中心とした尊皇攘夷の物語。尊皇攘夷といっても明治維新にチャンチャンバラバラで暴れまくったような攘夷武士の話ではありません。念のため。(2013.6.9)

追伸:澤田ふじ子さんは僕のお気に入り作家の澤田瞳子さんのお母さんでした。

春風伝(葉室麟)

 土佐の坂本龍馬の海援隊、中岡慎太郎の陸援隊、そして長州高杉晋作の奇兵隊は明治維新の陰の立役者。吉田松陰に師事して尊皇攘夷の渦中に飛び込んだ高杉春風こと高杉晋作。

 上海の太平天国に見た欧米列国の横暴から国を守るという気迫を、攘夷に向けて文字どおり命をかけて諸藩を奔走。まさに天馬、空を行く。

 そんな晋作を著者は独特のタッチで淡々と描き出し、ふんだんに漢詩を織り込むことで、知的な革命家としての高杉晋作を演出した。

 後半の西郷隆盛、中岡慎太郎、坂本龍馬らの登場は、やはり歴史好きの者に嬉しいプレゼントでした。(2013.5.31)

日輪の賦(澤田瞳子)

 律令の制定によって倭の国から新しい日本国をつくりあげようと命をかけた讃良(持統天皇)とその官吏の活躍を描いた著者3作目の書き下ろし。ほんとうに読み応えがあり、歴史的背景の描写もしっかり、さらにスリリングな後半の展開。もう文句なしでした。 (2013.05.20)

蛍草(葉室麟)

 蛍草、別名を露草、あるいは月草とも言う。主人公菜々が使える風早家の奥方様への哀惜の情を切々と歌い上げました。またしてもやられました。ただ今までの作品と異なって、作者の新しい一面が見られて興味深い作品になっています。たとえば、藩の剣術指南役である壇浦五兵衛を“だんご兵衛”と、髑髏模様の羽織を好む芸者あがりの質屋の女主人お船を“おほね”と、長屋の隣に住む儒者の椎上節齊先生を“死神先生”と、そして極めつけはヤクザの親分である涌田の権蔵を“らくだの権蔵”などと言わしめる余裕。笑いあり、涙ありの一冊でした。(2013.4.29)

海賊と呼ばれた男(百田尚樹)

 「いちばん大事なことは日本人の誇りと自信を失わないこと。それさえ失くさなければ、何も恐れることはない」(下巻、P.348)
 出光興産創業者出光佐三の歴史経済小説です。23年度本屋大賞に輝いただけあります。勇気と希望を与えてくれる必読の書です。(2013.4.28)

永遠のゼロ(百田尚樹)

  十死零生。もうこれはいけません、途中から涙、涙、涙です。宮部久蔵さん、日本は立ち直りますよ。この本が大ヒットしたんですから。娘たちにも読まさねば、、、、、。 (2013.4.18)

使命と果実(梶村啓二)

 「野いばら」で第3回日経小説大賞を受賞した著者の最新作です。前作同様、著者特有の叙情的な文章でちりばめ、主人公百済忠士の愛と憎しみの60年を詩的な世界に誘っていきます。読了後、しばし茫然自失となりました。 (2013.4.14)

本作がデビュー作品ということですが、狩野永徳の絵に対する執念と情熱を見事に表現しています。将軍足利義輝との交流があまりに淡白なのは仕方ないとして、織田信長との対決が尻切れとんぼだったのは残念。(2013.9.1)